学童期の栄養の特徴
学童期の栄養所要量は、成人に比べて多く、幼児期に続いて栄養所要量も多く必要なのが特徴です。エネルギー所要量は6歳では男子78kcal/kg、女子75kcal/kg、10歳男子60kcal/kg、10歳女子57kcal/kgです。成人に比べてエネルギー所要量が多く、エネルギー代謝に必要なビタミンB1も多く必要になります。タンパク質所要量は、6歳男子2.Sg/kg、6歳女子2.49/kg、10歳男子2.1g/kg、10歳女子2.0/kgでありますが、これも成人に比べて学童期は多く必要です。タンパク質の質の面からみますと動物性タンパク質比は40~50%の範囲が望ましい値です。脂肪の量は脂肪エネルギー比が25~30%とされていますが、10歳代後半では成人病予防のために脂肪エネルギー比の上限である30%では高すぎると考えられ、できるだけ25%に近づけることが望ましいとしています。特に学童期に必要な栄養素はカルシウムと鉄です。カルシウムは骨の成長に伴って需要が増し、蓄積されるので十分に摂取しなければなりません。鉄の所要量は11歳ぐらいまでは体重の増加にほぼ比例して所要量が段階的に増えていきますが、思春期になると女子では月経による鉄の喪失が始まりますので成人女子と同量12mg1日となっています。近年、小学校低学年から習い事、塾通いをする子どもも多くなり、遊びもゲーム、テレビなど部屋で遊ぶことが多く、戸外で体を動かす遊びをとうして身体を鍛えたり、体力づくりをすることが少なくなりました。このような学童の生活は就寝時間が遅れる、夜食が習慣化する、食欲不振などをおこし朝食の欠食、偏食、過食、孤食などから肥満、高脂血症など成人病予備群ともいわれる子どもを出現しています。
6歳から小学校に通う11歳までを学童期、10歳~15歳以降を思春期に分類され、6歳~19歳までの時期をまとめて少年期と呼びます。乳児期に次いで成長発達が著しく、体の発達速度はピークに達します。またこの時期は身体活動が活発になるのが特徴で、急速な発育と、活動に応じた各栄養素の需要が多く、人生で最も栄養所要量が多くなる時期です。またこの頃には第二次性徴が現れ、女子では11歳~14歳頃に初潮、乳房の発達、脂肪の蓄積が始まり、男子では12歳~15歳頃から筋肉質となり、生殖ホルモンの分泌が盛んになります。この時期は、朝食抜きや偏食、インスタント食品の多量摂取、スタイルを気にしての過酷なダイエットなどによって、栄養の偏りが目立ち、貧血、ビタミンB1欠乏症、無月経、精神不安定などの障害が引き起こされやすくなります。また食事回数を少なくしたり、まとめ食い、過食などによる肥満が多くなるので、「自分の健康は自分で守る」という姿勢と、「規則正しい食習慣を身につける」ことが最も大切であることを理解させる必要があります。ただし、最も多感な時期なので押し付けや強要することは避けるべきです。
学童期の栄養所要量
学童期に起きやすい食事の変化
学童の朝食・孤食
1週間のうち1回以上欠食する児童は約1割あるといわれます。朝食は、1日の生活リズムをスムースに保つためにも欠かせない初めの食事で1日の活動を始めるためのエネルギー源であります。また、朝食をとることは脳にブドウ糖を供給し、脳を働かせることにつながり、知的活動、筋肉活動、体温が昼頃に最高になるといわれます。ある大学で朝食をしっかり食べている学生と欠食学生の学業成績を比較調査したところ、朝食をとっている学生の方が成績がよかったというデータもあります。朝食の内容についてもパンとコーヒ、ジュースだけでなく、卵、ハムなどのタンパク質、ご飯に味噌汁、卵というようにいずれもタンパク質を組みあわせることが大切です。1日の活動源である朝食をおいしく食べるためには早寝、早起き、起床から朝食まで少なくとも30分以上時間をあけるようにしたいものです。また、子どもの朝食の食欲は朝食を誰と食べるかによっても異なり、子どもだけで食べる場合は食欲も劣るという結果も示されています。子どもだけで食べる孤食は昭和57年国民栄養調査では、朝食で21%でしたが、昭和63年調査では26%となり、孤食率が4人に1人の割合となっています。夕食でも子どもだけで食事をするという子どもが4%みられます。心身ともに大切な時期である学童期の子どもにとって家族揃って食事をとることは、食事が栄養補給だけでなく、家族の語りあい、なごやかな雰囲気に浸れるなど心の栄養にもなっていくでしょう。
給食のある日とない日
給食のある日の方が給食のない日に比べて栄養バランスもよく食品のとり方もよくなっています。これを調査した結果からも同じような傾向が見られました。このことは家庭での食事の内容、食べ方も含めて考えさせられます。
偏食(好き嫌い)
偏食は幼児期に形成され、それがこの学童期に固定化される事がおおいです。親の過保護や溺愛により自己中心的で社会的適応力に欠けた子供に起こりやすいと言われております。偏食を矯正するには、根気と時間が必要であり、また無理な矯正はトラウマになり逆効果になる事もあり注意が必要です。偏食を矯正するポイントは、無理に強要しない、調理方法を工夫する、食べたら褒めるなどが基本です。
欠食
近年、夫婦の共働きに、子供が進学塾や習い事もあり、家族が一緒に食事をする機会が少なくなっております。また、夕食が遅い家庭では、朝食が食べられない子供や肥満体型の子供も増えております。学童期は著しく成長する時期でもあり摂取する栄養素が不十分でありますと十分な発育ができない場合もあります。欠食を起こさない様に家族で一緒に食事をする機会を作る事をすすめます。
間食(おやつ)
学童期の食事リズムを維持する為に午後1回の間食は必要であると思いますが、空腹感の有無に関わらず間食をする事がある。この背景には、学校や塾などで強いストレスを受け、その解放感から食事(間食)をするケースが多い事がわかっています。間食は、3度の食事で不足しがちな栄養素やエネルギーを補給する事が目的であり、糖分や脂分が多い菓子を大量に摂取する事は好ましくないです。また、間食をする時間と量は、夕食を十分摂取できるように考慮する必要があります。
夜食
夕食後、寝るまでに何か食べる子どもはの7~8割が果物、次いで牛乳、スナック菓子などを食べています。夜食の習慣は翌朝の食欲にも影響し欠食になったり、食べすぎによる肥満などを招くことにもなりこのような問題を少しでも改善、善処していくためにも厚生省が、平成2年に出した学童期の食生活指針を実行して行きたいものです。
- 生活リズムの乱れ、食欲不振などから朝食欠食児がかなり見られる
- 食生活の洋風化、脂肪の多い食品、砂糖の多い食品の摂取などから脂肪の取り方が上限に達している―小児期の肥満、高脂血症などの小児成人病の増加
- インスタント食品、加工食品の利用が増え、食生活の簡便化から、栄養素摂取のアンバランス
- 嗜好食品、嗜好飲料のとりすぎ、間食のとりすぎから食事と間食の混乱による必要な栄養素・食品の不足ととりすぎ
- 子どもの好む食品は、ソフト化し、堅いものより柔らかいものを―あごの発育が不充分となり、不正咬合から虫歯の増加
- 子どもの孤食が増え、食卓の団らんが失われつつある
肥満
上記の背景もあり、最近の学童には肥満体型が多いです。昔は、肥満は健康体であると言われていましたが、最近では生活習慣病の予備軍とも言われ早い段階での肥満体質の改善をする必要があります。特に両親や家族と一緒に食事ができない子供が偏食や間食をし乱れた食生活により起きている場合があります。もう一度。ご自身の家庭の状況を見直しましょう。
学童期の食事のポイント
食事は3食しっかり食べる
朝食抜きや昼食と間食の区別がつかない食事など、忙しい大人の悪い食習慣が子どもにも及んでいませんか?朝食は一日のエネルギー源でもあり必ず食べてから登校させるようにしましょう。朝食抜きで登校した子どもは、授業に身が入らない、気分が悪いなどを訴えることが多いようです。また、朝食をしっかり食べることは腸に刺激を与え排便を促す効果があります。
魚や野菜など好き嫌いをなくす
多くの子供が野菜や魚料理を苦手としています。野菜や魚嫌いは、栄養のバランスが取れなくなり肥満などの原因になります。野菜が苦手だと食物繊維の摂取量が減少します。空腹を満たすために炭水化物やタンパク質の食品を摂取することでカロリーオーバーとなります。また、野菜が苦手だと成長に欠かせないタンパク質を肉など魚以外から補うことで脂質の過剰摂取が心配されます。このように野菜や魚が嫌いな学童に対して、子供が好む料理(カレー、焼きそば)などに多く野菜を使用したり、魚料理を食べやすくするためにフライにしたりするのが有効です。近年、子供の高血圧や脂質異常症(高脂血症)などが問題となっております。これらを予防するうえでも野菜の食物繊維やカリウム、魚の油がからだに良い研究結果もありますから積極的に摂取することをおすすめします。
硬い物や食べづらいものも与える
子供の好きな料理の多くは、油っぽい料理、柔らかい料理などがあります。軟らかい食品を食べ続けることで肥満や顎の発育に悪影響が出る心配があります。特に軟らかい食品は、十分に噛まずに飲み込むことができ早食いの原因になります。早食いは、胃腸に負担がかかるだけではなく、食べ過ぎる傾向があり摂取カロリーのオーバーを心配します。また、学童期に硬い物を食べさせることで顎が発達し今後の成長に大きく影響します。
味付けは薄味にする
一度、強い味付けを覚えてしまうと薄味では不十分と感じる様になります。その為、徐々に濃い味付けになり、塩、砂糖、油などを多く摂取しがちになります。食塩の取り過ぎは、高血圧などの原因になります。味の好みは小さいころに決まります。なるべく薄味に慣れるように、味付けには気を付けましょう。
おやつの食べ過ぎに注意
おやつの食べ過ぎは食事に影響します。スナック菓子や甘い飲み物などを自由に食べていると食事のときに食欲がなく、おかず(嫌いな魚や野菜)を残して栄養のバランスを崩し、肥満や生活習慣病の要因をつくってしまいます。おやつは、時間、内容(食品の種類)、量に注意して次の食事に響かない程度に与えましょう。
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