栄養学とは|栄養状態の判定栄養素の過剰摂取と欠乏候による栄養状態の判定

栄養欠乏による身体特徴と身体測定による栄養状態の判定

栄養の良否は、最終的には身体微候として現れるが、各栄養素の欠乏や過剰に対しては、特異的な症状がなく、また、栄養の欠乏や程度、持続期間などによって微候が変化するので、熟練した専門医の視診や触診によって診断がされます。身体微候による栄養状態の評価には、特別の器具や試薬を必要とせず、容易に多人数の栄養状態を調べる事がという利点があるが、主幹が入りやすく、身体測定のような数量化も難しいので、さらに詳しく血液検査や心電図などの検査をあわせて行う事で最終的な判断を出すことが一般的であります。栄養素の過不足によって身体に現れる微候には以下のものがある。

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小児の栄養状態の判定指標

栄養状態を正しく評価して治療効果の判定、資料方針の決定を行うことは重要なことであるが小児における栄養評価は現在のところ不明な点も多く各施設で独自の方法がとられている。

病歴、臨床所見 1)全身状態    るいそう、肥満、浮腫の有無
2.皮膚、粘膜   乾燥、皮膚炎、出血斑などの有無
3.神経学的所見 腱反射など
身体計測 1.パーセンタイル値との比較 10パーセンタイル未満および90パーセンタイル以上では十分な経過観察必要

2.健常時体重比 健常時体重=現在の体重/健常時体重×100 栄養障害 軽度:85~95% 中等度:75~85% 高度:75%以下
3.体重減少率 体重減少率(%)=(健常時体重-現在の体重)/健常時体重×100 栄養障害 軽度:5% 中等度:10% 高度:10%以上

4.上腕三頭筋皮下脂肪圧(TSF)
一般に左上腕三頭筋の中間点(測定部位)の1cm上方の皮膚を脂肪とともに親指と人差指でつまみ上げ、皮下脂肪測定器で3回連続測定する。新生児で10mm、以後3ヶ月ごとに1mmずつ増加し、1歳で14mm、以後5歳まで13mm程度が標準とされる。 標準の80~90% 軽度脂肪減少 60~80% 中等度 60%以下 高度 

5.上腕筋位(AMC) 4.と同じ部位の上腕周囲径(AC)を巻尺を用いて計測する。 AMC=AC-3.14×TSF 新生児で9cm、9ヶ月で12cmとなり、1歳以後3歳まで13cm、その後2~3年で1cm増加 標準の80~90% 軽度蛋白消耗 60~80% 中等度 60%以下 高度 

血液検査 1.血清アルブミン:半減期が長く鋭敏さに欠けるがスクリーニングとしては最適。
2.rapid turnover protein(RTP):肝で合成される蛋白質で、短期の栄養状態の変化の評価に使用する。アルブミンと比し半減期が短く術後など急性期の栄養状態の評価に適する。
  半減期(日)
アルブミン 17~23
トランスフェリン 7~10
プレアルブミン 1.9
レチノール結合蛋白 0.4~0.7
D)免疫検査 1.遅延型皮内反応(PPD等) 陰性にて低栄養を示唆するが無感作の児では無効。 生後6週間は検査自体に意味がないとされている。
2.末梢血総リンパ球数 1,500/mm3以下で低栄養と判定。
3.リンパ球幼若化反応 T細胞機能を判定することにより栄養状態を判定。
クレアチニン身長指標 全身の筋肉量と相関するといわれる。 CHI=被験者の24時間尿中クレアチニン排泄量(mg)/同身長正常児の24時間尿中クレアチニン排泄量(mg)×100(%)
窒素バランス 蛋白質の栄養評価の一般的指標(計算法については次項2))
尿中3-メチルヒスチジン 主に筋蛋白中に含まれ、分解後再利用されずに95%以上が尿中に排泄される。骨格筋の蛋白代謝をある程度反映。
間接カロリメトリー法 呼気ガス分析による酸素消費、二酸化炭素排出、呼吸商を計測する方法。術後などの異化亢進期の監視として将来有望。

 

極度のエネルギーやタンパク質の欠乏による症状

エネルギー欠乏では体重が減少をし、成長が阻害される。体脂肪が消失し活動能力も低下する。また、糖新生のために体タンパク質が使われるので、結果としてタンパク質欠乏症を伴う。逆にエネルギー過剰摂取では、体脂肪が増大し肥満となる。肥満になると運動能力も低下する。タンパク質・エネルギー栄養欠乏は、PEMといわれ、タンパク質欠乏を主原因とするクワシオルコルとエネルギー欠乏を主原因とするマラスムスの2つに分けられる。いずれも発展途上国の乳幼児に多発している。(参照) タンパク質の栄養と摂取不足による影響

クワシオルコル

クワシオルコルは、クワシオルコールあるいはクワシオコアとも表記されるタンパク質の摂取が不足することで起きる栄養失調の一形態です。クワシオルコルの症状があらわれるのは、1歳から4歳の小児に多いが、年長の児童や成人でも見られることがある。これは、乳児の離乳後の食事がデンプンや炭水化物中心でタンパク質に乏しければ、子どもがクワシオルコルを発症する可能性がある。クワシオルコルの診断基準は足の浮腫である。他には、腹部の膨張、脂肪性浸潤物による肝臓の肥大、細い毛髪、歯の脱落、肌の脱色および皮膚炎が挙げられる。クワシオルコルの患者は、ジフテリアや腸チフスなどの疾病に対するワクチン接種を受けても抗体を作ることができない。その為、感染症などにより死亡するリスクが高くなっています。クワシオルコルの治療は、にカロリー源とタンパク質を加えることで対処することができる。しかし、この疾患は患児の心身の発達に長期にわたって影響を及ぼすことがあり、また症状が激しい場合は死亡することもあります。

栄養欠乏によるクワシオルコル

マラスムス

マラスムスは、体に備蓄されたエネルギーとタンパク質がいずれもすべて枯渇する状態をいいますす。マラスムスになった子供の体は衰弱し、体重が適正体重の80%以下になることもある。クワシオルコルの発症率は18か月を過ぎてから増加するのに対し、マラスムスの発症率は1歳になる前に増加する。予後はクワシオルコルよりも良好です。マラスムスが発症するのは、全般的な栄養不良に陥ったためにタンパク質、脂質、炭水化物が不足しているときである。この疾患は発展途上国においてしばしば発生する。とりわけ乳離れして離乳食を口にしだしたばかりで十分なエネルギーを摂取できない子供に発生しやすいです。マラスムス患者は、消化酵素の機能の不足と、腸内の脂肪を吸収する胆汁酸の機能の阻害を引き起こし、増殖したバクテリアによって変性させられ機能を失うこともあります。マラスムスは、栄養失調のために吸収と消化が妨げられやすくなることによって症状が重症化することがある。

栄養欠乏によるマラスムス

高齢者の栄養状態の判定指標

高齢者の低栄養を早期発見するためには、BMI(体格指数)や体重の変化、血液検査などで、こまめに体の状態を確認する習慣をつけることが大切です。BMI(体格指数)は、「体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で求めることができます。下に自分の身長と体重を入力して確認してみましょう。また、体重の減少は低栄養を発見するために最も重要な指標です。定期的に測る習慣をつけましょう。以下のいずれかに当てはまる場合は、低栄養のリスクがあると考えられます。①体重が6カ月間に2~3kg減少した②1~6カ月間の体重減少率が3%以上体重減少率は、以下の計算式で求めます。(通常の体重-現在の体重)÷通常の体重×100体重減少率が1カ月に3%以上5%未満、3カ月に5%以上7.5%未満、6カ月に7.5%以上10%未満の場合は、「適切な栄養補給によって体重が改善される可能性がある」として「低栄養の中リスク」とします。体重減少率がそれ以上の場合は「低栄養の高リスク」とします。

体重の変化以外のも栄養状態を把握するものとして血液検査値があります。ただし、どれかひとつの数値だけをみて判断するのではなく、さまざまな検査の結果と食事の状態(食事の量が減っていないか、偏食がないかなど)を総合的にみることが大切です。厚生労働省のホームページでは、介護予防マニュアル(平成24年3月改訂版)の中の「栄養改善マニュアル」で、身体や食事についての評価方法を詳しく紹介しています。

  • 血清アルブミン値:アルブミンは血液中の主要なたんぱく質です。3.8g/dL以下は注意が必要です。低栄養のリスクの目安
  • 血中コレステロール値:コレステロール値は低すぎてもリスクになります。150mg/dL未満では注意が必要です。低栄養のリスクの目安
  • 血中ヘモグロビン値:ヘモグロビンは貧血の指標となります。低栄養によって鉄欠乏性貧血が起こることもあるので気をつけましょう。

ビタミンの欠乏と過剰症

 ビタミン過剰症・欠乏症 過剰症・欠乏症の内容 
ビタミンAの過剰症
ビタミンAの欠乏症
 ビタミンAは、目の働きを正常に保ち、成長、発育を促し、皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあるので、ビタミンAが欠乏する事で夜盲症、角膜乾燥症を引き起こし成長も停止する。一方、ビタミンAは脂溶性ビタミンでもあり過剰症が認められている。しかし、ビタミンAの過剰症は非常に稀で一般の食事では起きづらい。
ビタミンB1の欠乏症 ビタミンB1が欠乏すると、末梢神経または中枢神経と心臓に異常が現れる。主症状は、末梢神経障害と心肥大として現れる脚気と中枢神経系に障害を起こし、眼球運動障害、運動失調、神経障害などを特徴とするウエルニッケ脳症の2つに分けられ、いづれもビタミンB1投与で治療できる。日本では、脚気が多くウエルニッケ脳症は少ない。欧米では逆の傾向である。
ビタミンB2の欠乏症 ビタミンB2が欠乏すと咽頭痛が起こり、口角炎、舌炎、鼻周囲に脂漏性皮膚炎などが生じる。しかし、これらの症状はビタミンB2欠乏症に特異的なものではないので、診断を確定するためには血中ビタミンB2濃度の測定が必要である。
ナイアシンの欠乏症 ナイアシン欠乏症は、ペラグラである。ペラグラの症状は、皮膚炎、痴呆、下痢、この頭3文字をとって3Dとも呼ばれる。
ビタミンB6の欠乏症 ヒトでは腸内微生物によって合成されるビタミンB6は、欠乏症を起こしづらいビタミンでもありますが、近年では経口避妊薬を長期間服用するとビタミンB6の欠乏症になる事が明らかになってきました。ビタミンB6の欠乏症は、舌炎、皮膚炎、神経炎、けいれん、貧血などがあります。
ビタミンB12の欠乏症 食事として摂ったビタミンB12は、胃粘膜中の内因子と呼ばれるムコタンパク質と結合して複合体となったのち小腸下部の回腸粘膜の受容体に吸着して吸収される。したがって、胃切除などによって内因子が欠乏状態になるとビタミンB12吸収障害が起こり悪性貧血になる。初期にはハンター舌炎という痛みの激しい舌炎が起きる。その他。知覚異常など神経障害を合併する事もある。
ビタミンCの欠乏症 ビタミンCは、血管壁の細胞どうしを接着させる働きがあるコラーゲンの生合成に関与している。ビタミンCが欠乏するれば血管壁がもろくなり、出血しやすくなり、壊血病になる。歯や骨の発育も遅れる。
ビタミンDの欠乏症 ビタミンDの欠乏症は、小児では、くる病があり、成人では、骨軟化症、老人では、骨粗鬆症を引き起こします。いづれも歯や骨へのカルシウムの沈着の低下が原因である。一方、ビタミンDの過剰症もあり、骨やその他の臓器にカルシウム沈着が促進され石灰化し、臓器の機能が低下をし、最終的に死に至る場合もある。これらは、普通の食事では起きづらくサプリメントなど誤って大量に継続的に服用した場合に起きるものであります。
ビタミンについての詳しい情報は、ここから参照できます。
  ビタミンの過剰摂取による症状(過剰症)
  ビタミンの摂取不足による症状(欠乏症)

ミネラルの欠乏と過剰症

 ミネラル過剰症・欠乏症 過剰症・欠乏症の内容 
鉄の欠乏症 体が鉄欠乏を防ぐために、体内の鉄の再利用、鉄貯蔵タンパク質でもあるフェリチンの存在、鉄の摂取量に応じた吸収量の調整など様々な機能を備えているが、最も欠乏しやすいミネラルの1つであります。一般的な鉄欠乏症は、鉄欠乏性貧血とも呼ばれており、疲れやすい、食欲不振、無力感などが主な症状です。
ヨウ素の欠乏症
ヨウ素の過剰症
ヨウ素が欠乏すると甲状腺腫が発生するが、周囲が海に囲まれた日本では海藻類などが豊富にあり、普通に食生活をしていれば欠乏症になる事はすくない。しかし、東南アジアやインドでは、ヨウ素欠乏による甲状腺腫による患者は多い
カルシウムの欠乏症
カルシウムの過剰症
カルシウムは、ヒトを構成するミネラルの中で一番多い成分である。カルシウムは神経伝達物質にも使われ、体内のカルシウムが欠乏すれば骨に蓄積していたカルシウムを動員させスグに欠乏症になる事は少ない。しかし、長期間欠乏状態が続く事によって骨の中のカルシウムは放出されつづけカラカラの状態なり骨粗鬆症になる事が多い。
ビタミンについての詳しい情報は、ここから参照できます。
  ビタミンの過剰摂取による症状(過剰症)

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