栄養学とは|食物繊維の栄養と作用食物繊維の栄養と作用

食物繊維の栄養と作用

食物繊維とは、食品の中には、ヒトの消化酵素では分解する事ができない様々な不消化成分が含まれています。このような不消化成分は、体内に取り込むことができなく便として排出されるため、栄養的な価値はないと考えられていた。また、不消化成分は消化管に大きな負担がかかり有害と思われていた時代もあった。この様に人の消化管で分泌される消化液で消化されず消化管で吸収できない成分を食物繊維と呼ぶ。食物繊維は、全粒穀物みたいな多くの食物繊維を含む食品を摂取すると便が柔らかくなる事は、古くはギリシャ時代より知られていた。また、日本で古くから、「こんにゃくはおなかの砂払い」といわれ、消化の悪い食品も何かしら生理的な機能がある考えられていた。しかし、食物繊維が果たす生理的な機能については、便秘に対する効果を除いてしられていなかった。食品加工の技術が発展し、食品の精製度が向上するにつれて食物繊維は除かれてきた。そして、先進諸国が精製度が高い食品を大量に消費するのと同時に大腸がん、大腸憩室症、糖尿病、胆石、動脈硬化、虚血性疾患などが多くみられるようになった。こうした中、イギリスの医師で、1940年代からアフリカでの医療活動をおこなってきたバーキット、トロウェルは、こうした病気がアフリカの住民には少なく、先進国に多い事に注目し食物繊維の摂取不足によるものではないかと示唆した。そして、バーキットは1971年に大腸がんに対する食物繊維仮説を出した。これ以来、食物繊維の栄養的な機能が注目されるようになり多くの研究が行われてきた。

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食物繊維の構造

食物繊維は食べ物のカスで、ダイエタリー・ファイバーとも呼ばれ、人の消化酵素では分解されず、便とともに排泄され、エネルギー源としては役に立たないのです。しかし食物繊維は健康維持に重要な役割があり、脂肪性食品の多い現代人の食生活には、欠くことができない重要な栄養素なのです。また、食物繊維は栄養素ではないが体内いろいろな働きをするため、第6の栄養素といわれています。食物繊維とは、人の消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体と定義されています。また、食物繊維はブドウ糖が結合した糖質の一種で、β-ブドウ糖で構成されています。食物繊維は、大きく分けて水に溶ける水溶性と水に溶けにくい不溶性の2種類があり、それぞれに違った特徴があるのです。不溶性食物繊維は、穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実など成熟した野菜や果物などに含まれ、糸状のもの、多孔質のものがあり、ボソボソ、ザラザラとした食感が特徴です。一方、水溶性食物繊維は、昆布、わかめ、こんにゃく、果物、里いも、大麦、オーツ麦などに含まれネバネバ系とサラサラ系があります。こんにゃくの原料は水に溶けますが、食用のこんにゃくになると水に溶けません。

難消化性デキストリンの構造式

食物繊維の働き

食物繊維の働きは、食物繊維独特の硬さ(弾力)が、そしゃく回数が増え、満腹感がもたらされるため、過食予防=ダイエット効果に期待ができる。食物繊維自体が消化管内で水分を含むと膨らんで腸内容物の体積を増加させ、腸内粘膜を刺激し便通を促進する。また、便秘予防。同時に便がやわらかくなり、痔の予防にもなる。そして、大腸内の腸内細菌(食物繊維を餌としている)増殖、大腸ガンの予防。食品添加物の害を軽減。血中コレステロール値のコントロール。動脈硬化・心臓病・循環器系疾患の予防・改善にも期待できます。

不溶性食物繊維は、胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促進します。大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。概して、水溶性食物繊維より発酵性は低い。よく噛んで食べるので、食べすぎを防ぎ、顎(あご)の発育を促すことで、歯並びをよくします。

水溶性食物繊維は、昆布、わかめ、こんにゃく、果物、里いも、大麦、オーツ麦などに含まれ粘度がネバネバしたものとサラサラ系があります。粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹がすきにくく、食べすぎを防ぎます。糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑えます。大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄します。

食物繊維の種類

食物繊維は、水に可溶、不要でその性質が異なる事がわかっております。水に溶けない食物繊維を不溶性食物繊維 IDF (water-insoluble dietary fiber)といい、逆に水に溶ける食物繊維を水溶性食物繊維 SDF(water-soluble dietary fiber)といいます。

セルロース (不溶性食物繊維)

植物の細胞壁を構成する主成分です。水には溶けないので、腸内で分解されにくく、異物として働き、腸の壁を刺激します。便の核となって便の量を増やし、通じをよくします。

ヘミセルロース (水溶性食物繊維・不溶性食物繊維)

植物の細胞壁の構成成分で、希アルカリ液による抽出で得ることができます。ヘミセルロースは、多糖系の複雑な混合物で、水に溶けるものと溶けないものとがあり、種類はさまざまです。腸内では重要な生理作用を果たしており、とくに、水に溶ける「ヘミセルロースB」は、さまざまな生理機能を持っています。このヘミセルロースは、米ぬかや小麦のフスマ、トウモロコシの外皮など、穀類外皮の細胞壁の下に多く含まれています。

リグニン (不溶性食物繊維)

細胞壁を強国にしている高分子化合物で、木質素ともいわれいています。軟らかい植物には少なく、硬い木材などに多く含まれています。強い酸やアルカリにも全く溶けませんので、大腸内でも吸収されません。一般的に野菜には少なく、イチゴ、ラズベリー、梨などに多いとされています。また、飲みもののココアも案外たくさんのリグニンを含んでいます。

ペクチン質 (水溶性食物繊維)

植物の細胞壁や細胞内に含まれており、野菜よりも果物により多く含まれています。イチゴジャムなどの果物ジャムは、ペクチン質が糖と酸によってゼリー状になったものです。

グアーガム (水溶性食物繊維)

植物細胞内に蓄えられている粘着性のあるガム質の一種です。グアーガムは、インダス河流城の乾燥地帯に生育する豆科の植物、グアー樹の種子に多く含まれているので、その名がとられています。水に溶けやすく、粘性も強くデンプンやタンパク質とよく混じりあうので、食品の増粘剤やゼリー化剤としても多く使われています。

コンニャクマンナン (水溶性食物繊維・不溶性食物繊維)

里芋科のコンニャク芋に含まれているグルコマンナンのことです。水を吸収すると膨満してネバネバしたコロイド状(小さな粒子が水に溶けている状態)になります。私たちが日頃よく口にするコンニャクは、このコロイド溶液にアルカリを加えて加熱し、固まらせたものです。コンニャクナンマンは水溶性食物繊維ですが、固まらせたものは不溶性食物繊維になります。

イサゴール (水溶性食物繊維・不溶性食物繊維)

オオバコ科の植物のプランタゴオバタの種子の皮殻を粉状にしたものです。保水性・膨潤性に富んでいます。

アルギン酸 (水溶性食物繊維)

昆布、ワカメなどの褐色の海草にミネラルと結合した形で含まれています。ミネラルと結合するとゼリー状に固まる性質があり、加工食品を作るときの凝固剤や安定剤として使われています。

寒天 (水溶性食物繊維)

テングサやオゴノリなどの海草(紅藻類)に多く含まれています。アガロースとペクチンの二つの糖類からできています。冷やすとゼリー状に固まるので、食品にはゼリー化したものがよく使われています。

キチン (水溶性食物繊維・不溶性食物繊維)

エビ、カニ、イナゴなど固い殻の主成分で、食物繊維では珍しい動物性です。エビ・カニの甲羅は普段は食べませんが、サクラエビやイナゴなどは丸ごと食べるので簡単に摂ることができます。また、このキチンは茸などにも含まれています。いずれも、このままでは水に溶けませんが、化学的に処理をしてキトサンという物質にすると、水に溶けるようになり、消化管のなかでゼリー状になります。

食物繊維の所要量

食物繊維の必要量(摂取量)の目安は、成人で1日に20g~25gと言われています。(カロリーでいうと1,000kcal当たり10gという計算)毎日の健康なお通じのためには1日20g、また心筋梗塞による死亡率の低下が観察された研究では1日24g以上と報告されていますので、私たちは食物繊維をもっと積極的にとる必要があるのです。よく食物繊維の量を「レタス○個分の食物繊維」と表現している広告を見かけますが、実際のところレタスはさほど食物繊維が多いわけではありません。日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、食物繊維の摂取目標量は、成人男性が1日20g以上、女性が18g以上。レタスは1玉あたり300~500g、100gあたりの食物繊維は1.1gですから、全部レタスで摂取しようとすると、女性なら4~5玉もの量を食べなければいけないのです。

食物繊維の所要量

食物繊維の推奨量
成人男性 20-25g
成人女性 20-25g
  妊婦 特に付加はありません
  授乳婦 特に付加はありません

食物繊維の欠乏症と過剰症

食物繊維のとり過ぎによる健康障害は、普通の食生活ではほとんどなく、逆に努力しないとすぐに不足しがちです。食物繊維を多く含む食品を食べやすく調理するなどしてしっかりとるようにこころがけましょう。食物繊維の摂取不足は、心筋梗塞、糖尿病の発症との関連を認めたとする研究報告が多数あります。また、循環器疾患の強い危険因子である血圧並びに血清、LDL-コレステロールとの間にも負の関連が示唆されています。さらに肥満との関連を示した疫学研究も多数発表されています。食物繊維が排便習慣に影響を与える可能性はあると報告されてはいるが、どの程度の食物繊維が良好な排便習慣に寄与するかについては十分に明らかになっていません。

食物繊維には、過剰症状と欠乏症があります。

項 目 食物繊維過不足における具体的な症状
食物繊維過剰症 摂りすぎると下痢を引き起こし、必要なミネラル分まで排出してしまいます。また、下痢の症状が長く続くと以下の症状にもなりやすいです。 腸での栄養吸収を低下します。特に脂肪の利用が低下するため脂溶性ビタミンの吸収が低下が特徴。また、ミネラル(カルシウム、鉛、鉄)を吸着し、腸からの吸収を妨げます。 
食物繊維欠乏症 摂取量が不足すると 便秘 になりやすくなります。 また、便秘の症状が長く続くと以下の症状にもなりやすいです。便秘になる事で腸内の便の滞留時間が長くなり大腸がんになるリスクが高くなります。また、体内代謝が円滑にできず、肥満・糖尿病になりやすく動脈硬化・高脂血症や高血圧・虚血性心疾患のリスクが高くなります。 

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