炭水化物の栄養と働き
炭水化物は、消化することで糖質と食物繊維に分解され、糖質は脳や筋肉などの体の主要なエネルギー源として使われます。また、残った糖質は、体内の血糖値が低下した時に動員できるよう脂質として蓄積をされます。糖質は主に小腸で消化・吸収されて血液といっしょに全身をめぐり、体の中で1gあたり4kcalのエネルギーになります。特に脳では血液中の糖質だけがエネルギー源なので、極端に糖質が不足すると意識障害などがおこることがあります。同じエネルギー源でも脂質やタンパク質と比べると、すばやく使えるという特長があります。このため、ウォーキングなど長時間の軽い運動には主に脂質が使われますが、短距離走のように短時間の激しい運動には糖質からのエネルギーが使われます。糖質の体内での存在量は意外に少なく、血液中のブドウ糖のほか、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして少量を貯蔵しているだけです。すぐ使う量以上に食べた糖質は、体の中で脂肪となって蓄積されるからです。
炭水化物の種類
多くの市販の食品には、パッケージなどに、その製品の栄養成分が表示されています。表示の中の栄養成分に、「炭水化物」もしくは「糖質」「食物繊維」と記載がありますが、「炭水化物」は、「糖質」と「食物繊維」の合計で表されます。
- 単糖類、二糖類:炭水化物は単位になるブドウ糖などの単糖類がいくつ繋がっているかで分類されています。単糖類の主なものにブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース、二糖類の主なものに蔗(砂)糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)があります。これら単糖類と二糖類の多くに強い甘味があり、消化吸収が速く血液内の血糖濃度(血糖)を上げやすく食後高血糖の原因にもなりやすいので、一度に多く摂らないように注意が必要です。
- 少糖類:少糖類という単糖類が2〜10個程度繋がった糖質で、多糖類のでんぷんを原料にして酵素の力で分解して作られもの(発酵)が古くからよく知られています。製品化された少糖類にデキストリン、マルトデキストリン、粉飴、水飴、麦芽糖、マービー、トレハロースなどがあります。
- 多糖類:単糖類がたくさん繋がったもので、主な多糖類にでんぷん、グリコーゲン、デキストリンなどがあります。この中でも光合成で大量に作られ植物体内に保存されるでんぷんが重要です。そのままでは消化されにくいのですがでんぷんを多く含む穀類、芋類、豆類などは、焼いたり、煮炊きすることで人間の重要な栄養エネルギー補給源に変わります。
- 消化できない炭水化物:分子量の多い多糖類のなかに人間が消化できない炭水化物があります。昔はあまり栄養学的に注目されなかったのですが消化全体のなかで整腸作用などいろいろな役割を果たしていることがわかり、1日20g位は食べるように指導されるようになりました。ところが我が国では伝統的に野菜の繊維質、海藻、精米しすぎない穀類、こんにゃくなどを心がけて食事に取り入れ、既に食物繊維を健康に生かしていたのです。
栄養所要量
食事摂取基準で示される炭水化物の摂取量は、3食平均して摂取すべきものです。特に朝食による炭水化物の摂取は脳を活性化させ、集中力や記憶力を高める効果があります。脳や神経のエネルギーは炭水化物が分解されたブドウ糖しか利用できず、睡眠中も脳でエネルギーが消費されるため、朝食で補給できないとエネルギー欠乏状態となり、体や精神に悪影響を及ぼすだけでなく、過食による肥満の原因となります。
推奨量 | |
成人男性 | 摂取エネルギーに対して 20%以上25%未満 |
成人女性 | 摂取エネルギーに対して 20%以上25%未満 |
妊婦 | 特に付加はありません |
授乳婦 | 特に付加はありません |
欠乏症・過剰症
炭水化物はとり過ぎると、肥満や生活習慣病をまねくおそれがあります。一方、不足が続くと、体力の低下や疲れやすくなるなど快適な生活の妨げになります。適切な摂取をこころがけてください。
項目 | 過不足における具体的な症状 |
過剰症 | 過剰なブドウ糖は体脂肪として蓄蔵され、肥満の原因になります。 (糖尿病の誘因にもなる。) |
欠乏症 | 思考力の低下、やせすぎ。 |
炭水化物が多く含まれている食品
炭水化物が多く含まれている食べ物は、ご飯、パン、めん、いも、果物、砂糖、はちみつなどです。1日2,000kcal必要な人では、およそ60%程度の1,200kcalを糖質からとるのが望ましいといわれます。これはご飯にすると、茶わんにおよそ5杯分です。
炭水化物が多い食品
ご飯、麺類、パン、もち、果実、イモ類、和菓子、かき、かぼちゃ、栗、グレープフルーツ、玄米、小麦粉、さつまいも、さといも、じゃがいも、すいか、そば、 とうもろこし、夏みかん、麦芽米、パイナップル、白米、ハトムギ、バナナ、パパイヤ、干しぶどう、りんごなど炭水化物が多く含まれる食品についてはここを参照