タンパク質の栄養と働き
タンパク質の栄養は、1グラムにつき4キロカロリーのエネルギーがあり、20種類のアミノ酸で構成されています。成人では、8種類がアミノ酸が体内では合成することができず、必須アミノ酸となっています。アミノ酸がバランスよく含まれている食品(アミノ酸スコアー)は、肉、魚、豆です。量を多く食べる穀物もタンパク質の主要な摂取源となっています。タンパク質の種類には、肉や魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質と、穀類や豆類などの植物性タンパク質があります。動物性は、動物性脂肪が含まれている為、摂り過ぎによる肥満や動脈硬化などの生活習慣病にかかる危険性が高まります。植物性は、食品により一部の必須アミノ酸が不足している場合がありますが、組み合わせるといったことで栄養バランスを整えることが出来ます。
大豆タンパク質の消化吸収と働き
大豆に含むタンパク質は、血中コレステロールを低下させる作用があることが明らかになっています。 体内のコレステロールは胆汁酸を経て腸と肝臓を循環していますが、消費される胆汁酸の量が増えるとコレステロールから胆汁酸が作られ、失われた分が補てんされるため、結果的に体内(血中)のコレステロールが低下することになります。大豆タンパク質については、分解酵素で処理された後の非消化画分が、胆汁酸と強力に結合し体外に排泄されることが報告されており、血中コレステロールを低下させるのは新たな胆汁酸の生成を促進するためと考えられています。 なお、米国食品医薬品局(FDA)では、大豆タンパク質のもつコレステロール低下作用に着目し、1日あたり25g(大豆75g≒豆腐一丁)含む食品について「心臓病のリスクを低減する食品」という趣旨の表示をすることを認めました。
血圧を下げる作用
静かなる殺人者(Silent Killer)といわれる高血圧症は、日本では成人の半数近くがかかっているといわれています。 大豆タンパク質が分解されてできるペプチドは、血圧の調節に関与する酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を強く阻害することが報告されています。ACE阻害剤は血圧下降剤として用いられているため、大豆タンパク質にも血圧上昇の抑制効果があると考えられます。
抗酸化作用
不飽和脂肪酸の酸化によって生じる過酸化物やフリーラジカルは、食品の風味や栄養価などを損ない、品質の劣化を引き起こすだけでなく、体内においては生活習慣病や老化などを引き起こす引き金になるといわれています。 大豆が分解されてできるペプチド類は抗酸化作用をもつことが知られています。 なお、タンパク質分解物の抗酸化性は、多様な作用機構を持つ各種のペプチドの共同作業によって生み出されたものです。
肥満防止作用
タンパク質を摂取すると、交感神経が刺激され活性化して、褐色細胞組織(熱産生が起こり体重がやたらに増えないように調節が行われている)が熱産生が高まりますが、大豆タンパク質を摂取すると、この余分なエネルギーを消費する作用がほかに比べ大きいことが報告されています。
タンパク質の栄養所要量
栄養所要量は、下の表にに示すとおりです。体重1kg当たりに換算しますと、0歳児が最も高く(2.7g/kg)、年齢を経るにつれて漸減し成人では1.0g/kgとなります。プロのスポーツ選手は1.8から2.0/kgを摂取します。高齢者(70歳以上)では、成人より若干多く1.13g/kgとなります。したがって、高齢者はタンパク質不足に陥らないよう利用管理に注意する必要があります。
タンパク質の栄養所要量
年齢 | 栄養所要量 |
0~6か月 | 2.6g/Kg |
6~11か月 | 2.7g/Kg |
成人男性 | 60g |
成人女性 | 50g |
妊婦 | +10 ~ +25g |
授乳婦 | +20g |
タンパク質の栄養過不足による影響
栄養素の過剰・欠乏 | タンパク質過の栄養過不足における具体的な症状 |
過剰症 | タンパク質の過剰分は尿に排泄されるので、腎臓に負担がかかり腎機能障害を起こす場合があります。また、尿からのカルシウムの排泄量が増え、骨粗しょう症 にもつながります。 |
欠乏症 | 体力や免疫力が低下します。血管が細くなり、脳卒中の危険が高まります。子供では成長障害を起こします。アフリカなどの飢餓で苦しむ国の子供は、タンパク質が欠乏している栄養失調クワシオコール(kwashiorkor)が発生している。 |